6月になって

長らくご無沙汰に過ぎてしまいました。この秋に2冊の著作を出版する予定のため、手直しに明け暮れていました。長年、望月苑巳さん主催の「孔雀船」に連載した美術随筆の編集が手間取り、疲れました。バウツ、スピリアルト、ベックリン、ボッシュ、クノップフ、エトセトラ。
20年間ヨーロッパを歩き回った収穫です。「孔雀船」以外にも新聞連載や雑誌に断片的に紹介した文章があり、まとまりがつかない有様です。
海外へ出かける折がなくなったので、日本での美術展にはできる限り足を運んでいます。
最近、「漱石の世界美術展」を観ました。漱石は「文学論」の中でフレデリック・ワッツに ついて、ほんの数行触れています。私はワッツの画集を出版しようと思っていた時期があり、イギリス19世紀の画壇にじかに触れていた漱石の文献は大変興味深く読んでいました。
ワッツの作品は今回の展示にはなかったけど、それなりに珍しい作品に出合いました。このお話はまた後日。

 

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3月までの出来事

昨年末以来、身辺に病人、借りている土地(元夢人館のあった地域)の値上げ問題、大西和男さん追悼集の思いがけない評判のため嬉しい多忙、そんなことに振り回されて細かい詩に関するご報告を全部パスしてしまいました。思い出す順に書いておきます。

まず松尾直美遺稿翻訳詩集「解放されて」(ドイツ現代詩・花神社)がやっと出来上がりました。 なんと死の年から4年以上が経ってしまいました。エルゼ・ラスカー・シュラー、エンツェンスベルガー、など著名なドイツ詩人から、ふと知り合った詩人の作品まで楽しげに訳していった彼女の日々が生き生きと此処にあります。ほとんどのものが「詩学」紙上に長期連載されたものです。松尾直美は私の小学校6年生以来の仲良しで、音楽家を志していたのですが、なぜかドイツ文学にのめりこみ大学教授として生涯を過ごした女性です。私は自身が美術書の出版をする身となり、メンデルスゾーン、エルツェなどドイツ語圏の画家を扱う時はいつも彼女と旅を共にし、その美しいドイツ語の会話によってドイツの識者たちの信用を一気に集めてもらいました。音楽を志した人だけに発音の美しさはとびきりだったのです。

昨年末に頂いた詩集では与那覇幹雄さんの「ワイドー沖縄」に非常な感動を受けました。あまり に熱意のこもった礼状を書いたらしく、すぐ与那覇さんから電話があり、その後彼は私のことを友人知人に「ぼくのお姉さん」と告げるのでにぎやかなことでした。ま、お母さんと言われなくてよかったか。私たちは会ったことがないので、どんな弟か、外で会っても分かりません

3月初旬。詩人クラブ出版のアンソロジー「現代詩選」がやっと出来上がりました。私は美術担当なので、やはり絵の効果が一番気になります。今回九州の画家伊藤研之(故人)の作品10点余りを使わせていただきました。大成功と思っています。いかにも詩人好みな繊細で夢がかった絵がカバーを飾ってくれました。画家の絵は福岡の市立美術館に収蔵されているほか、県立美術館では遺作展も開かれたことがあるので作品のいくつかは皆さんの目にふれることがあるでしょう。

昨年暮れに頂いた詩集「となりにゐた人」(秋吉康著)花神社 についてももっと早くご紹介したかったのに、ほんとうに遅ればせとなってしまいました。彼は故大佛文乃さんの詩集や詩碑のためにご尽力のあった人で、ご自身の詩集はこれが初めてということです。詩集出版の折にはご相談にのるつもりでいたのに、私の家庭の事情で何の力にもなれず恥じ入っておりました。しかし詩集はさりげない表現の中に清らかな悲しみと温かさがあって、私にやさしく語りかけてくれるものでした。詩集のタイトルだけは彼の詩篇の中から私が選ばせてもらったものです。私の生涯で私の隣にいた人って一体何人いたのだろうか、そしてそのほとんどの、ある日ある時間の隣人を、私が思い出すことも、記憶していることもないのだという、変に茫漠とした気分にさせられたのでした。一読お薦めしたい詩集です。

ごく最近いただいた詩集「毛のむしられたエスキース」(赤木三郎著)は嬉しい詩集でした。私は著者と10代から同人誌を共にした間柄なのに、会ったのは50代という不思議な友人です。夢の中に生きているようなこの詩人と夢を調理してやろうと出刃包丁を構えている私とでは距離がありすぎて、ただその作品をうっとり読むばかりです。でも久々の纏まった詩集を心から喜んでいます。

同人誌「きょうは詩人」24号の初校校正が終わりました。4月下旬にはお送りできると思います。

 

 

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メンデルスゾーンの絵について

音楽家メンデルスゾーンが美しい水彩画を数多く残していることは、とてもよく知られていると、私は勝手に思い込んでいた。音痴で、小学校時代は音楽の時間はびくびくと過ごしていた私だが、少女時代からこの音楽家が絵も上手だったことを聞き知っていた。もちろん終戦直後の日本でその絵を見れる日があるとは想像もしていなかったが、世界には多芸多才な人がいるんだなあ、としょんぼりしていたものである。その無芸、情けない私がいろいろの事情のあげく、1992年、メンデルスゾーンの水彩画集を出版することになってしまった。いまでも変な気持ちである。画集は適当に売れていったが、今年になってからまたぽつぽつと注文がくるようになった。もちろん多くの人に見てもらいたいので、一心に荷造りしては発送しているが、不思議な気分ではあった。

思い出したのは先日日経新聞朝刊にメンデルスゾーンの絵が一枚紹介されていたことである。あれは音楽家の死の年に描かれたスイス、インターラーケンの風景画である。やや未完成かと思われる、淋しい、消え入りそうな風景である。遠くへ折れ曲がっていく道が、あの世へ行く道のようで、私の好きな一枚である。ああ、あの記事のおかげで画集を買いにきてくれたのかと、幸せな思いに満ちている日々である。

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大西和男追悼集「悼 大西和男さん」について

追悼集「悼 大西和男さん」について1月26日の読売新聞朝刊に芥川喜好さんが優しい心を込めた紹介文を書いてくださいました。嬉しくて、関係した友人、知人にコピーを配りまくってしまいました。恥ずかしがり屋で、超照れ屋だった大西さんは雲間に隠れていることでしょう。こちらは未知の方々から追悼集希望の連絡が次々入り、目をまわしています。実は私、ブログというもの、始めてからやっと1年という人間で、なかなか上手くマシンを操作できず、日々勉強です。でも嬉しいので夢中です。「どうして私の所が分かったのですか?」なんて野暮なことを連絡者にたづね、「ブログにきまっているでしょうが」と呆れられています。しっかりしなきゃ。

追伸 「悼 大西和男さん」へのお尋ねが多いので、送金法を記しておきます。ご利用ください。

定価・1000円(送料共)郵便振替口座 00100-7-183916 ときわ画廊出版

 

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2013年のご挨拶

とうとう年が明けてしまいました。昨年暮、大西和男さんの追悼集が28日に出来上がり、彼のお命日元旦に間に合うよう死にもの狂いで発送いたしました。

関わりのあった方でまだ届いていない方はご連絡ください。あまりの忙しさにお年賀状を出しそびれてしまった方も多々あって、お詫びをもうしあげます。

追悼集に執筆されている方々のお名前をここに記しておきます。

鈴木隆治 木村孝 新川和江 粕谷栄市 黒岩隆 小柳玲子 松田幸雄 栗原澪子 池井昌樹 墨岡孝 新藤凉子 林立人 江森國友 高橋順子 佐々木安美 古谷鑑子 正津勉 佐藤正子 棚沢永子 榎木融理子 井上荒野 小沢信男 四竈公子 大日方公男 永田仁志 香川佳子 加納こずえ 中山哲史 井川博年 土肥元子 大原哲夫 アーサー・ビナード 宮野一世 根本明 松村美晴 岩井昭児 藤井恵子 小野光子 江代充 長嶋南子 伊藤啓子 星野元一 小林尚代 秋山洋一 鈴木貴子 加島牧史 横木徳久 芥川喜好 鵜澤誠 鵜澤ますみ

 

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